心の内をさらけ出した「メリエンダ」東京・TSUTAYA O-EAST公演
8月16日にEveによる「メリエンダ」の東京・TSUTAYA O-EAST公演が行われた。
今回は過去のEveのライブと比較すると、演出面で様変わりしており、ライブがスタートする開演前からファンをワクワクさせるアーキテクチャが施されていた。観客は最初から会場のステージ側の大きなディスプレーに皆釘付け。そこにはEveのオリジナル楽曲のMVに出演してきたひとつめ様などのお馴染みのキャラクターが個々に映し出された。
ある家の中で、少年がソファーに寝転がったり、キャラクターがシャワーを浴びたり、掃除をしたりなど、映像はシーンごとに移り変わっていく。
誰かがインターホンを鳴らしても、少年はソファーから離れることなく、更にはお菓子を手に取る場面もあり、扉まで歩いていくのがとても億劫である様子が窺える映像となっていた。
まだEve本人は登場していないにも関わらず、お馴染みのキャラクターが登場する度に会場内にファンの歓声が上がるという異様な光景でもあった。開演5分前になると、また新たなシーンが出現し、またもや誰かがインターホンを押す。すると、先程の少年がやっと立ち上がり、扉を開けるという展開に。
暫くすると突然、天候が雷雨に見舞われ、その雷の音にあわせて、観客の腕についたLEDリストバンドが白く光り出す。音と光の見事な共鳴は、歌の始まりがもう近いことを知らせているようだった。
その後、トーキョーゲットーに出演するキャラクターが音楽と重なるように共に映し出され、トーキョーゲットーからスタート。
イントロが終わった途端、画面のMVのカラーが少し薄くなり、画面と入れ替わるようにして(正式には入れ替わらないが)Eveが画面の裏側の中央に現れた。そして、そのままEveはトーキョーゲットーを歌唱した。
そして、ステージ側からの抑えきれない気持ちを爆発させるように幕が下ろされ、Eveとバンドメンバーが登場。そして、「アウトサイダー」を披露。
その後も定番の「ナンセンス文学」、「ドラマツルギー」を含めたロックテイスト溢れる楽曲を怒涛の勢いで歌い上げていく。
「僕は幼少期のことをよく覚えていて、その気持ちを忘れたくないという気持ちで作りました」と哀愁を漂わせ、メロウな楽曲である「ホームシック」も歌唱。暖かみのあるメロディと優しい歌声が会場全体に響き渡り、観客を魅了した。
今回のライブで特別印象に残ったことを挙げるとすれば、それはEveが自身の性格について少し触れた点だろう。
「結構、闇のある楽曲を作っているので、Eveって闇を抱えている人なのかなーとか思う人もいるんじゃないかなと思います。
僕はみんなからゆるいとかふわふわしてるとか言われることが多いんですけど、実際はそんな根っから明るい方ではなくて...どちらかというとネガティブなんです。ネガティブな人間なんです僕。」と真摯な表情で観客に言葉を放つシーンがあった。
ちなみに、昨年にリリースしたアルバム『文化 』は、闇ともいえる部分を楽曲により晒すことで、今までのEveの可愛い印象をEve自身が大胆に覆したともいえる革新的なアルバムとなった。『文化 』の収録曲から間接的に自身の闇の部分を少しずつ曝け出してきたが、今回のライブのタイミングで、面と向かって自分の口から本音(闇の部分があることも)を伝えたのだ。それはもう勇気ある行動だった。
同時に、開演前のディスプレーの映像の少年の扉を開けるに至るまでの行動が、今回のライブでのEveが本音を話すところまでの行動に通じていたようにも思えた。少年が最後にやっと扉を開けたように、Eveもまたひとつ心の内を話すことで、心の扉を解放したのだろう。
アンコールでは、可愛らしい楽曲である「惑星ループ」を披露。続いては、みんなを笑顔にさせたいという想いが詰まったような楽曲「お気に召すまま」を歌唱。アウトロでEveがフィンガースナップを鳴らす合図によって楽しい雰囲気が維持されたまま、この日のライブはフィナーレを迎えた。
そしてライブ終了後には、未発表曲が流れると同時に、両端の小さなディスプレーから11月4日に東京・新木場STUDIO COASTで東名阪ツアー「メリエンダ」の追加公演を実施することが告知された。
Eveの内に秘められた想いがやっと解き放たれた瞬間は感動的で、またひとつスターダムに駆け上がった瞬間に立ち会えたようなライブだった。
次回の追加公演はEveのライブ史上、最大規模の会場で開催される。ますます進化を遂げるであろうEveに注目だ。
画像:EveのTwitterより